世界農業遺産　茶草場農法

茶草場農法とは、茶畑周辺のススキやササなどの草を秋から冬にかけて刈り取って、茶畑に敷くことで、茶の品質向上や土壌改善、生物多様性の保全につなげる伝統農法のことです。
静岡県で特に見られる農法で、2013年には世界農業遺産に認定されました。

茶草場農法の発祥の地は、静岡県掛川市東山地区です。この地区は、「静岡の茶草場農法」の中心的な場所として知られています。
茶草場農法とは、茶園の畝間にススキやササなどの草を敷き詰める伝統的な農法です。この農法は、生物多様性を守りながら、高品質なお茶を生産するために行われています。

掛川市東山地区は、特に茶草場農法が盛んで、その風景が世界農業遺産として認定された理由の一つです。

草刈り:
秋から冬にかけて、茶畑周辺の草地（茶草場）でススキやササなどの草を刈り取ります。

敷き:
刈り取った草を茶畑の畝間に敷きます。これにより、茶の根を寒さから守る、土壌の水分を保つ、雑草の生育を抑えるなどの効果があります.。

堆肥化:
敷かれた草は徐々に分解されて、有機堆肥となり、土壌を肥沃にします。また、お茶の味や香りを良くする効果も期待できます。

茶草場:
茶草場は、草刈りによって管理され、自然環境が保たれるため、多様な動植物が生息できる場となっています。

茶草場農法のメリット:
お茶の品質向上:茶葉の生育環境が良くなり、お茶の味や香りが向上します。

土壌改善:
有機堆肥化により、土壌の肥沃性が高まります.
雑草抑制:草を敷くことで、雑草の生育を抑えることができます。

生物多様性の保全:
茶草場は、多様な動植物が生息できる環境を提供します。

この農法は、農業と自然環境の調和が評価され、世界農業遺産に認定されています。
伝統的な農業技術でありながら、環境保全にも貢献する、優れた農法として評価されています。

世界農業遺産（Globally Important Agricultural Heritage Systems: GIAHS）とは、国連食糧農業機関(FAO)が認定する制度で、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた、独自性のある伝統的な農林水産業システムを指します。
具体的には、農業生物多様性、地域の伝統的な知識、文化、景観などが一体となった、世界的に重要な地域を認定し、その保全と持続可能な利用を図ることを目的としています。

伝統的な農林水産業システム:
時代や環境の変化に適応しながら、長年受け継がれてきた農林水産業のシステムが対象です。

生きた遺産:
過去の遺産としてだけでなく、現在も活動が継続され、将来にわたって持続可能な形で継承されるべきものとされています。

包括的なシステム:
農林水産業だけでなく、それに伴う文化、景観、生物多様性なども含めた、総合的なシステムとして評価されます。

持続可能な利用:
保全だけでなく、その価値を活かし、地域活性化や経済活動にも繋げていくことが期待されています。

世界農業遺産の目的:
生物多様性の保全:
伝統的な農林水産業システムは、多様な生物が生息・生育できる環境を維持しており、生物多様性の保全に貢献しています。

文化の継承:
地域の伝統的な知識や技術、文化、景観などを次世代に伝えていくことを目的としています。

地域活性化:
認定された地域は、そのブランド価値を高め、観光客誘致や農産物の販路拡大など、地域経済の活性化に繋げることが期待されています。
日本では、2011年に初めて「能登の里山里海」と「トキと共生する佐渡の里山」が認定されました。

世界農業遺産と世界遺産の主な違い:
世界遺産は、建造物や遺跡などの不動産を対象とし、厳格な保護を目的とする一方、世界農業遺産は、農林水産業を営む地域全体を対象とし、保全と持続可能な利用の両方を目的としています。

能登の里山里海（:石川県能登地域）
トキと共生する佐渡の里山（:新潟県佐渡市）
静岡の茶草場農法（:静岡県掛川市周辺地域）
阿蘇の草原と持続的農業（:熊本県阿蘇地域）
クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環（:大分県国東半島宇佐地域）
清流長良川の鮎（:岐阜県長良川上中流域）
みなべ・田辺の梅システム（:和歌山県みなべ・田辺地域）
高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム（:宮崎県高千穂郷・椎葉山地域）
大崎耕土（:宮城県大崎地域）
静岡のわさび栽培地域（:静岡県）
にし阿波（:徳島県）